参加者の声

品川先生
堺市教育委員会

TIプログラムに参加し、初の自治体導入を実現できた

転職までして夢に見た教員になり、オリジナルの教育プログラムを構築して子どもたちの成長を実感。やり甲斐も十分な日々……のはずが、想定外の教育委員会勤務となり、少しブルーになっていた頃、TIとの出合いがありました。

 教員免許を取るために大学に入り直し、堺市の中学校教員として採用されたのが32歳の時でした。ほかの先生と比べたら遅いスタートでしたが、4年目からは学年主任を任されて、同じ学年の先生たちと一緒に考えて作り上げた独自の教育プログラムに取り組みました。
 これは中学入学からの3年間を通じて学習していくプログラムで、総合的な学習の時間と教科学習を結び付け、長野県への修学旅行を軸に学校行事も組み立てていくというもの。体験型の学習や地域交流が中心にあって、生徒が堺市内で長野県の特産品を販売したり、逆に修学旅行で訪れた長野県内で堺市の特産品の販売やPR活動を実施したりということを行ないました。

 このプログラムに取り組んだきっかけは、中学校に入学してきた生徒たちを見て自分たちが主体的に何かをするぞという気力を感じる場面も少なく、また教室で座って教師からの指示を待っているだけという印象の子どもたちに、「学びの意図を持って、いろいろな活動をさせたいな」と。授業で学んだことが自分の実生活や社会で役立つんだと実感できたら、きっと授業が面白くなるだろうと思ったのです。
 プログラムを通じて、生徒たちの姿は明らかに変化していきました。表情が明るくなって、自分たちで考えて動くようにもなり、助け合おうという意識も芽生えました。実際、1年生の時はトラブルもあったのに、徐々に自分たちの中で解決していくようになり、3年生になった時には、「何が大切なことか」自分たちで考えて行動していました。生徒たちの成長を本当に実感する3年間でした。

 教員として学校現場での6年間、特に同校での最後の3年間は充実した時間を過ごすことができ、自分自身としては、次のステップでは別の学校で新たなチャレンジをするものだと思っていました。ところが、異動先は教育委員会。これはまったく想定もしていないことでした。
 4月からいきなり市役所勤務になると、当然ながら、それまでの勤務環境とは状況も一変しました。「なんのために教師になったんだろう」と悶々とする日々が続き、周囲には愚痴や不満を漏らしていました。

 そんな時にある人から、職場の外に出るのもいいんじゃないかと、いくつかの研修プログラムを紹介してもらいました。TIはそのうちのひとつでした。大阪あたりの近場で、日帰りで参加できるプログラムもあったんですが、「山梨で合宿」というのが魅力に感じられて、TIを選びました。その当時はすごく閉塞感を感じていたので、いつもと違った環境に身を置いて気分を変えることで、状況を打破したいという思いもあったかもしれません。

 TIでの経験は、すべてが新鮮でした。合宿を通して、何か特定のアクティビティーが特に良かったということはなくて、一つひとつが自分自身の中に、着実に積み上がっていくような感じを受けました。
 いちばん刺激になったのは、基本的には「TIって何にも教えてくれない」ということ。参加者みんなで考える、みんなで作り出すというのが基本なんです。そういう基本方針のもとで、自分たちで考えて作っていくということを実践していると、「ああ、こういうことが学びなんだな」と強く実感しました。自分が先生になって学校でやっていたこと、やりたかったことって、こういうことなんだろうなと思えたんです。
 そうか、学びって「教えてもらおう」じゃないんだな、と。
 他の参加者との交流も大きかった。昼間はみんな格好いいことを言って、問題なくやれているようなんだけど、夜の飲み会で話してみると、みんなそれぞれ悩みを抱えて、もがいている。教師って、もがかない印象じゃないですか。「先生は正しい答えを持っていて、子どもから聞かれたら何でも答えるべき」みたいに思っているところがある。それが、そうじゃなくてもいいんだな、もうちょっと気楽にやってもいいんだな、と思えたのが良かったです。

 山梨での合宿を終えて、その後ラーニング・デザインセッションやラボを経て、12月頃から、実践に移ります。TIのプログラムで学んだことを、自分が今いる現場に持ち込んで、実際に動いていく。ただ、自分にとっての現場とは、学校ではなくて、教育委員会。ふだんの授業に取り入れるということはできないわけです。
 そこで、自分がTIで受けたようなプログラムを、自分の所属する堺市の先生たちにも受けてもらう研修プログラムを作りたいと考えました。というのも、教育委員会が主体で実施する従来型の研修だと、どうしても先生たちは「教えてもらう」姿勢になってしまう。これを変えるには、外部の人に来てもらって、これまでにないメソッドを取り入れて研修をやることが絶対に必要だと思ったんです。
 とはいえ、そのためには予算だとか、いろんなハードルを越えなければなりません。当たり前ですが、とても個人の思いつきでできる話ではない。それでも結局、何人もの関係者が動き回ってくれて、さまざまな事情や思惑がうまくはまってくれたおかげで、TIのプログラムが初めて、まずはトライアル的に自治体に導入されるということが実現したんです。

 結果的に、このトライアルは成功したと思っています。もちろん失敗したことや課題として残ったこともありますが、いろんな成果が生まれ、継続されています。参加した先生たちからも、自分自身や学校の子どもたちにポジティブな変化が出ているという声が聞こえてきていて、手応えは感じています。ただ、本当にその成果と課題を見極めるには、やっぱり3年くらいはかかるはずなので、今後も修正すべきところはしつつ進めていきたいです。

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