参加者の声

山田先生
私立高校勤務

自分の考えを発言することでアイディアが生まれる

いま、新型コロナウィルス感染症の影響下にあって、学校現場も混乱の中にあります。
「でも、こんな時だからこそ、発想を広げることはできないかと考えています。学びの方法は一つではないはず。『本質は何処にある?』と考えれば、混乱の中にあっても議論はきっと始まります。そして、みんなで考えを出し合う、お互いに思うことを話し、きちんと聞く機会をつくれば、何かができる。状況を変えていくことはできるんです」
TI2期に参加した私立東邦高校に勤務する山田剛司先生にお話を伺いました。

 TIとの出会いは、3年前の山梨合宿(研修)です。学校からの指名で、少しめんどくさいなぁと思いながらの参加でした。研修といえば、講義を聞きながらメモをとってテストみたいなものを受けて、最後に「まとめ」を書いて提出、というイメージでしたから。
そもそも学校教育はベルトコンベアー的だと考えていました。自分が受けてきた教育も振り返ればそうでしたし、特に教師になってからその思いを強く持ちました。勉強が得意で好きで、がんばって難関大学を受験したいという生徒はともかく、どの教科にもたいして興味の持てていないような子も、一律に並べて教室に閉じ込め、同じ時間に同じ授業を受けさせる様子は、ブロイラーを並べる養鶏場かと思ってしまいますし、大学受験を前にして強制的に補習を受けさせる様子には、 アヒルの嘴を摑んで開かせ、大量の餌を流し込んで作るフォアグラを彷彿とさせられます。
研修についても、それまで受けてきたものはほとんど先述の通りの構成で似たり寄ったり。TIについても、期待はありませんでした。 ところが、合宿に参加して、ぼくは衝撃を受けました。

 それまで受けてきた研修とは全く違う。集合してすぐ、本当に最初から、丸く輪になって喋る。スクール形式に並べられた机に座り、メモを取りながら講義を聞くのとは全然違います。こんな形式があるんだと驚きました。自分の前に机があること自体、心理的な防御になっていると思うんです。それが、初めて出会った参加者同士が、防御壁のない丸裸、全員がお互いに見渡せる椅子に腰掛けただけの状態で、しかも「整った(言うことが決まった)人から」喋る。「自分を」喋ることができるという体験をしました。

 3日間の合宿を過ごしてみても、「まとめ」は求められない、振り返りが自信になる。 何より参加者である先生方から大きな刺激を受けました。みんな思っていることを言語化できているし、前向きな発言をする。それが、その後もSNS等を通じて積極的に人とつながり、新しい情報を取り入れていこうとするきっかけにもなったと思います。 その後、勤務校に戻ってから職員研修の一環として、自分でもワークショップを開催しました。参加した同僚からは好評で、手応えもあった。それがぼくの自信になりました。

今はこの状況下、学校自体動くことができず、職員同士の研修もままなりませんし、授業自体もできない状況にある。それでも何かはできるはず、と試行錯誤しています。 勤務校では、2,3年生にはICT学習支援サービスのClassiを導入、生徒はスマホでアクセスすることもできます。新1年生には、iPadが配布されています。つまり、遠隔授業をする環境はある程度整っています。2月末に休校となってからというもの、ぼくは、インターネットを使ってなんとか授業らしきものができないかと試しています。特進コースの授業ができないかとZoom(webミーティングシステム)で数学の解説をしたり、1年生のHRもしてみたり。今年の授業開きは担任の自己紹介を自撮り録画して、動画配信しました。学級という集団をつくる、生徒との関係性を構築するためには、そういったことが必要だと考えたからです。オンラインで参加した生徒の表情はいずれも楽しそうでした。

入学式は、保護者と生徒を分けて、それぞれ窓を開け放った教室に集まって行われました。校長先生の話も、放送のみ。そんな式の後でぼくは、お母さんたちの集まる教室に行って、「桃太郎誕生の話」をすることにしました。妻に作ってもらった明るい桜模様のマスクをつけて。
「みなさんは、桃太郎の話をご存知ですよね。あの有名な、桃から生まれた英雄の話です。でも、あの桃太郎伝説も、洗濯をしていたおばあさんが川上から流れてきた巨大な桃を拾わなければ、始まらなかったんです。どんなことも同じ。新奇なものにチャレンジすることがなければ、何も始まりません」
中学生までは、与えられたことをやればいい。それでいいと思うんです。でも、高校生になったら、新しく出会う催し物やプログラムに、自分からチャレンジしなければならない。高校生になるとはそういうことなんです。その話をどうしてもしたかった。それは、自分の経験と重ね合わせているからかもしれません。

元々新しいこと、人を驚かせるような面白いことが好きな性格です。それが、自分でベルトコンベアー的だと思う学校教育の中にあって、いつしかそれに合わせた「役割」を演じるようになっていたのかもしれません。新しいことには手を出さないようにしよう。何か発信することで余計な仕事が回ってくることが面倒くさい。黙ってルーティンをこなしていれば波風を立てることもない……。そう思って過ごしていました。
そのロックを外してくれたのが、TIでの経験だったように思います。自分を出す、自分の考えを発言することでアイディアが生まれる瞬間に出会うことができた。以前は自分の意見に反対されるのも、発言することで仕事を任されるのもイヤでした。でも今は、職場でも自分が何か発信することで、そのアイディアをよりよくするための補足意見が出てくる。もしくは、その意見自体は支持されないとしても、新たなアイディアの提案が生まれる。そんな循環が起こせるのだということに気付き、それを起こそうと、行動を変えることもできた。 そのことに気付くことができたのも、TIのおかげかもしれません。

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