参加者の声

中村先生
公立小学校勤務

自分の原点に気づき、子どもに向き合う姿勢が変わった

目下、新しい授業へのチャレンジや自身のスキルアップに向けた構想を練っているという中村拓海先生。自分から学校の外に飛び出し、できるだけ多様な人の多様な価値観に触れてみたい。そして、そこで得たものを子どもたちにも還元していきたいという思いは、TIで得た経験と人たちとの縁があったからこそ、と言います。

 TIには第3期(2018年度)の山梨合宿から参加しました。当時は小学4年生の担任をしていたのですが、その学年は3年生の頃から荒れていて、学力が追いついていない子、周りとうまく馴染めない子、それに立ち歩きの子もいたりという、ものすごく大変な学年でした。
 それで、担任になった4月から自分なりに試行錯誤を続けていたんですが、これがなかなかうまく行かなくて。ついには、校長先生や他の学年の先生たちの力まで借りることになってしまいました。しかも、そのことがまた自分へのプレッシャーになってしまって、すごく追い詰められていたんです。
 他の先生や子どもたちの前では「このクラスは大丈夫なんだ」というポーズで取り繕うのですが、内実はぐちゃぐちゃ。あのタイミングでTIに参加していなかったら、いつかは体罰をしてしまったかもしれないと感じるくらい、追い詰められていました。
 そんな状態のまま山梨合宿に参加することになったのですが、不思議とつらいとは思いませんでした。むしろ「ちょっとリフレッシュになるから嬉しい」というくらいの気分で向かいました。

 それが、いざプログラムが始まってみると、初日から「しんどいな!」と。チェックイン、チェックアウトの衝撃は特に大きいものでした。参加者全員が輪になってみんなの顔が見える状態でそれぞれ自分の思いを話すので、他の参加者の気持ちがダイレクトに伝わってくる。そして自分が話す番になると、心をガーッと開かされて、内面に抑えていたものがわぁーっと溢れ出てきてしまう。でも、それが絶対に受け入れられるという安心感みたいなものもあって、心地よく感じる部分が確かにあった。
 そういう感じで衝撃を受けながらプログラムが進められていくのですが、他の参加者の姿勢や思いを知るにつれて、いま自分がやらなきゃいけないことにも気付かされていきました。
 そんなに大きなことでなくてもいい、「まずは目の前の子どもをしっかり見ること」。同時に、合宿が終わる頃に改めて意識するようになっていたのは、「自分が大切にしてきたもの、自分の原点って、何だったんだろう?」ということでした。

 元々、大学在学中は、中学か高校の数学の先生になりたかったんです。これは、中学のときに出会った数学の先生たちがかっこよくて、「ああいう大人になりたいな」という思いがあったからです。それと、サッカー部の顧問にもなりたくて、サッカーの指導者ライセンスも大学在学中に取りました。
 ところが、大学3年のときに「このまま指導者になっていいのかな?」という不安が生まれてしまった。自分探しのように働く目的を考えるイベントに参加したり、いろんな人に会いに行ったりしてみたんです。
 結局、「やっぱり先生になろう」と思ったのは、ボランティアでコーチをしていた小学6年生のサッカーチームがきっかけでした。彼らが練習をすごくがんばって、その結果として大会でも活躍する姿を目の当たりにして、「ああ、そうか。自分は子どもが成長する瞬間が好きなんだな」と思えたんです。だから、教職として小学校、中学校、高校のどれを選ぼうかと悩んだ際にも、「子どもの成長を間近で見られるところ」と、小学校を選びました。

「子どもの成長を見るのが好きなんだ」という自分の原点を思い出したのは、鈴木寛先生から教えていただいたことの影響もありました。それが「個別暫定解」。
 いま目の前にいる子どもの姿や行動は「その時その時の個人の暫定的な答え」なんだと。つまり、その子の姿や行動は今後も変わっていくけれど、「いま」という時の暫定的な答えがこれなんだ、というお話でした。それを聞いて、自分は、目の前の子どもが「いま良い子になっている」ことよりも、「この先どうなっていくのか、どう成長していくのか」を見るべきなんだ、と気付いたんです。
 この気付きは、その後、自分が子どもに向き合う姿勢に大きな影響を与えました。
 たとえば、もう4年生なのに時々ギャーッと自分を押さえられなくなってしまう子がいるとします。その時、「いまはこうでも、大人になってもこのままという子はいないから、どこかで気付くだろう。だとしたら、自分はいま何を伝えるべきだろうか?」と考えるようになりました。その上で、これまでの自分だったら「静かにしなさい!」と注意していたのを、あえて放っておいて後で話を聞くといったような手立てを講じられるようになりました。
 この違いは大きい。ちょっとかっこいい言葉で言うと、子どもの成長を信じられるようになったんだと思います。
 合宿ではそれ以外にも、他の参加者が抱えている「子どもをどうにかしたい!」みたいな熱い思いや言葉に触れられたということも大きかったです。
 特にいまも強く印象に残っている話があります。沖縄で心を病んで仕事を辞めてしまっている人の多くが先生で、その人たちは「他の人が求める人」になろうと頑張り過ぎて、心が折れてしまっている。本当はチューリップなのにバラになれと言われて、無理してバラになろうとして、心が折れちゃったんだ……という譬え話をしてくださった方がいて。その話で気付いたのは、誰でもその人自身のよさ、その人の在り方というものを大切にすることが、必要なんだということでした。

 山梨合宿の後、2学期が始まってからは、自分自身の行動に明らかな変化がありました。
 子どもを叱らなくなったんです。正確には、叱ることはあっても、キレることがなくなりました。それ以前は、子どもにキレてしまっていたんですが、それが減ったという自覚があります。
 それに、自分をよく見せようという気持ちがなくなって、楽になりました。それで、態度や行動も変わったんだと思います。1学期は、それこそ授業をしていても、他の先生へのアピールのためという意識が大きかったのが、「いまここに立って教えているのは子どもたちのためなんだ」という意識に切り替わりました。それに伴って、子どもたち一人ひとりに向き合って声を掛けられるようにもなったんです。
 いま、少しはゆとりを持って――若干ですけど――しなやかさを手に入れて仕事ができるようになったのは、TIでの気付きとそこで出会った仲間たちのおかげかなと思います。

NEWS

続きを見る