参加者の声

滝沢先生
公立中学校勤務

「常に外の世界に目を向けよう」という気持ちを持てるようになった

ずっと「自分探し」を続けていたという滝沢薫先生。TIの参加者から「認められた」と思える体験をしたことから本来の自分を取り戻すことができたようです。

 教師になってからは――もしかすると教師になる前からも――ずっと「自分探し」を続けてきたような気がします。
 大学は教育学部に入ったので、周囲は教師になる人ばかり。でも、私はその雰囲気にあまり馴染めずに、ヨーロッパに一人旅に出たりしていました。旅先では様々な国の人たちに出会って、自分と同じ歳でもずいぶん考え方が違うことを体感しました。そこで「この差を生む要因は何だろう?」と考え、行き着くところ「やっぱり教育だな」と。
 同時に、日本の教育を受けて、日本の文化的背景を持つはずの自分がそこにうまく馴染めない、はまれないのはなぜなんだろうということも考えていました。
「自分って何なんだろう?」子どもの頃から、そんな問いを常に抱えていたと思います。
 そんな時に教育社会学という学問を知り、良い先生との出会いもあって大学院では日本と米国の教育の比較をテーマに研究しました。これは面白く、教師になってからも役立っています。

 そんな学生時代を経て、やがて教職に就いたのですが、そこには、それまで想像もしなかったような職場環境がありました。
 初めて赴任したのは田舎の学校でしたが、子どものためにと無理を押して勤務し続けた結果、結局倒れてしまわれる先生方の姿を目の当たりにしました。責任感が強いがためにがんばった教師が傷つき、倒れてしまうような職場は絶対におかしい。経験がないながらも強く感じたことを覚えています。
 次に勤務した学校は、まさに荒れまくりの中学校でした。とにかく普通のことができない。授業なんかもちろん成立しませんし、私自身も生徒から面と向かって罵声を浴びせられたり、力の強い生徒に威嚇されたりしたときはもう本当に「死んでしまうかも」と感じることさえありました。親にも同僚にも弱音を吐けなくて、駐車場に止めた車の中でひとりで5分間だけ泣いてから学校へと向かった時期もあります。
 ただ、幸運なことに私は、その学校が一丸となって「この学年から絶対に立ち直らせるんだ」との決意を持って向き合った学年が、3年生になった年に赴任したのです。生徒会の顧問を受け持つと、自然と行事など折々に3年生と触れ合う機会も多くなりました。同僚の先生方は「1、2年生の時には、こんなに荒れていたんだよ」といった話も教えてくれましたが、目の前の彼らは一生懸命に行事に取り組んでいる。生徒会の彼らと一緒によさこいのダンスチームを作ったことが周囲に注目されるという嬉しい出来事も経験し、「ああ、こんなに生徒って変われるんだ。素晴らしい!」と感じることもできました。

 その後の赴任先でもあらゆる体験をし、多くの教育現場を見聞きする中で、私の中で「教師って一体何なんだろう?」という問い、また、教師の資質や教師間の関係性に関する問いが大きくなっていきました。
 例えば、生徒に対して怒鳴りまくり、強圧的に出ることで言うことを聞かせるといった昔ながらの教師がまだ存在する。荒れてしまっている学校で正攻法がまったく通用しない中では、これも有効なやり方なのかもしれません。でも一方で、「そのやり方って、社会で通用するのかな」という疑問が頭の中に宿ります。
 また、同僚に対して傲慢さが出る、横柄になってしまう教師も多いようです。例えば学校や学年での成果について自分の手柄のように話したり、誰かが何か失敗をした時に、「尻拭い」なんて言葉を使う。それが特に若い教師の職場環境における悩みにもつながっていきます。
 もちろん、教師には素晴らしい面もある一方で、こういった問題が根強く存在する。結局それは、教師が学校の外の社会をよく知らないことが背景にあるんじゃないかと考えるようになりました。自分自身はそうならないためにも、社会とのつながりをつくらなくちゃ。そんな意識が生まれた頃、出会ったのがTIでした。

 TIには1期(2016年)から4期(2019年)まですべて参加しましたが、やはり最初のインパクトが大きかったです。特に、他の参加者や講師の先生方からのアプローチに衝撃を受けました。
「この人たちは、初対面の私に対して、ここまで真剣に関わってくれるんだ」
 そう感じて嬉しく、ものすごく「認められた」気分になったんです。
 それまで自分が存在していたのは、すごく狭い世界だったのだと思い知らされました。たいていの教師が普段付き合うのは、自分が勤務する学校の生徒やその保護者、同僚、それに学校出入りの業者の方々、たまに地域の方といった範囲です。私も、そんな狭い世界の中だけで思考したり悩んだりしているつもりになって、本来あるべき「自分」というものを見失っていたのかもしれないと気付きました。
 そんな衝撃を受けたことから続けて参加した2期と3期は、周りの人から学んだり知識を吸収したりで精一杯。その次の4期になって少しイニシアティブを取りながら進められるような感触を得ることができました。同時に職場でも、ある種リーダーとしての行動を求められる状況になってきました。まだまだ課題はありますが、自分が徐々に向上しているような感覚があります。
 「学校の中だけじゃ狭い」という意識、「常に外の世界に目を向けよう」という気持ちを持てるようになったことが大きいのだと思います。社会に目を向け、そこにいる人たちと真剣に関わること、自分自身も社会をつくる一員なんだという自覚が芽生えたことで、学校という地に足を着けながら前を向いて歩いていける「自分」になってきた――TIで得た大きな収穫です。

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