Yahoo!ニュース「休校中の挑戦、授業動画500本」と報道後の活動

イベント主催者: 一般社団法人ティーチャーズ・イニシアティブ
第1回 アルムナイラボ 9月12日(日)より

<写真左:青野祥人教諭、写真右:瀧澤哲郎教諭 >

 ティーチャーズ・イニシアティブ(以下「TI」)3期生の中野区立中野東中学校 教諭、青野祥人です。私が在籍する学校は、2019年度に教育現場のICT(情報通信技術)化を進める研究開発校に指定されました。研究開発校としてタブレット端末やプレゼンテーションソフト、Googleフォームを使った授業を実験的に進めてきました。

 一部の教員によって試験的に進めていたICT化が学校全体で活用され、浸透していったのはコロナ禍に入る2020年度以降です。きっかけは2020年4月におこなった「リモート歓迎会」でした。教員同士の歓迎会をZoomでおこなって、まずは慣れるところから始めました。校長や先生方の協力のもと、5教科で動画制作、配信をしていき、動画本数が500本を越えたころで取材をいただきました。

 結果的にYahoo!ニュースのトップに取り上げていただき、東京都中野区内でも活動報告の機会をいただきました。今では中野区の学校でiPadの利用ができるようになりました。

 私たちはトライ&エラーを繰り返しながら様々なツール(ビデオエディター、Googleのツール、YouTubeなど)を利用し、学校行事や学習をおこなってきました。2020年度の活動と、報道後の取り組みにあたる2021年度の学習内容や動画制作事例も踏まえて詳しく説明していきます。

参考記事:休校中に授業動画500本作った公立中の“奇跡”、新卒から60代まで全教員の「学びの空白を作らない」戦い

【2020年度】子どもたちとのつながりを絶やさない

 通学がなくなりオンラインでのやり取りが増えた頃、子どもたちとのつながりをつくりたい思いから生まれた活動が「毎朝担任コラム」です。休校中から少しずつ始め、全面的に登校できるようになってからも、毎朝Google Streamに3人の担任が起きたことや感じたこと、行動したことをコラム風に発信しました。教員の言葉に子どもたちがリアクションをしてくれて、生徒との距離が近くに感じられる過ごし方ができたのではないかと思います。

プロジェクト化と楽しい学習「新しいチャレンジ」へ

楽しい校外学習とプロジェクト

 オンライン学習が盛んになり、ICTの活用に慣れてきたことを踏まえ、校外学習においてICTを全面的に有効活用しようと考えました。従来通りの校外学習にならないためにはどうしたらいいか考えた末、テレビ制作会社の方を講師として招き、講義をしていただきました。現場の方から意見を聞いた後は校外学習を通して訪問したエリア毎のCM制作をしました。

 動画の編集方法や言葉の入れ方を生徒に伝え、動画の企画、撮影、編集まですべて生徒が担当しました。完成したCMはクラスで共有し、講師の方にもコメントをいただきました。単純な校外学習だけではなく、生徒が楽しくプロジェクト活動をおこない、面白い動画ができたと思います。

体育祭ではなく「全員が楽しい会」

 学校の行事である体育祭は、学年別におこなう競技と全体でおこなう競技をわけ、可能な限り生徒に任せる体育祭へと様変わりしました。行進や徒競走は無しにして、一部の競技をルール決めから生徒にお願いしました。私たち教員はオブザーバーとして入りますが、基本は生徒が進めていきます。生徒が新しい競技をつくれるといった、ワクワクできる体制をつくっていきました。

 「すべての生徒にとって楽しい体育祭」という目的を設定し、みんなでつくり上げていく体育祭を目指しました。結果、今までは「体育祭が嫌だ」といっていた生徒や、運動の苦手な生徒も含めて「みんなが楽しめる体育祭」となりました。

自分たちで監督したクラスエンドムービー

 新型コロナウイルス感染症が再拡大した3月、多くの生徒が楽しみにしていた合唱祭が中止となりました。私は中止と決まった瞬間にクラスの実行委員である生徒たちを呼び出して「合唱祭はできないけれど、クラスに思い出を残せるものをつくりたいよね」と呼びかけました。

 生徒と共に最後の学活を有効に活用して企画をしたのが「クラスエンドムービー」です。今回も企画から生徒に全て任せました。みんなが感動するものをつくろうと実行委員だった2人の生徒が中心になり、0から作品をつくり上げました。

オンラインで進める国語の授業風景

 

 私の担当である国語の授業を例に当時の様子をご紹介します。国語の授業では、目的に応じた広告つくりをおこないました。

 思考の整理をする際にジャムボード(Google Jamboard)を使い、対象物のキャッチフレーズを考えて広告制作に取り組みます。成果物は何を使ってもいいと伝えたところ、WEBサイトをつくってもいいかと提案してきた生徒がおり、簡単にWEBサイトが作成できるツール(Google site)を紹介しました。お披露目の際はすごいものができていましたね。

(生徒が作成したWEBサイト)

全員でトライ&エラー、生徒は想像を越えた成長をみせてくれる

 2020年度の1年間、私たちは新しい取り組みを積み重ねてきました。教育側として学んだのは、実践を繰り返すと学びが広がり、生徒に任せると私たちの想像を越えるアウトプットや行動をとってくれることです。

 生徒は「おれらできるじゃん、動画編集もできるじゃん」など、「できる」体験が増えるともっと挑戦したくなり「任せて欲しい」と、より能動的になってくれます。教員側と生徒側のチャレンジが相乗効果でよい結果に結びついてくるのです。

 最後のクラスエンドムービー制作時は「みないでください。最後の日にみせるので」といわれたくらい、意識が日に日に変わっていきました。ICTのツールを活用すると自己表現できるようになります。当然、苦手な生徒もいますが、得意な生徒は「隠れた個性&才能」を発揮できるので、チャンスを広げてくれるツールとして面白いものだと思います。

【2021年度】共有から協働・協創へ、「紙対応」から「神対応」へ

 2021年度となり、1人1台iPadの配布が始まり、GIGAスクール構想の推進が本格化してきました。ここで立ち返りたい点があります。そもそもGIGAスクール構想の目的は何でしょうか?

GIGAスクールとは、Glodal and Innovation Gateway for Allの略で、「全ての人にグローバルで革新的な入口を」という意味を持ちます。2021年度、私たちはこの意味を再認識してGIGAスクール構想を目指していくことにしました。

ICTツールを使った「即時共有できる仕掛け」は引き続き継続しつつ、協働や共創活動を中心に、学びの最適化を目指しました。また、教員の働き方改革として「紙対応」を減らす「神対応」をしていこうと取り組みを始めました。

神対応その1:朝の健康チェック

 健康チェックカードを紙で管理している学校は多く、我々も例外ではありませんでした。毎朝体温や体調を記入してチェックをしてたのですが、どうしても時間や手間がかかります。GoogleフォームとGoogleスプレッドシートを利用すればリアルタイムで記録ができ、ワンクリックですべて確認できるようになります。

神対応その2:日記/時間割

 生徒日記へのコメントにも時間を要していました。そこでGoogleスプレッドシートを使い、時間や場所に関係なく生徒の状態を把握できるようにしました。日記のコメントにリアクションすると安心感につながり、夏休み明けのコミュニケーションも円滑になったような気がします。

 1週間分の時間割、持ち物管理も紙でやっていましたが、Googleスプレッドシートでの運用に変えただけでなく、Googleカレンダーと連携をして進路関係の説明会やイベントのスケジュールを生徒が確認でき、係の人が入力できるようにしました。

神対応その3:修学旅行

 修学旅行は例年だと紙でつくったしおりを携帯しますが、1人1台iPadとグループ毎にルーターを持ってもらい、デジタル化しました。紙で作成していたルートマップも止めて、最低限のチェックポイントはあらかじめ私がGoogleマップにピン留めし、生徒が行きたいルートを決められるようにしました。

神対応その4:学習計画表

 学習計画表もGoogleスプレットシートを活用し、テスト勉強全体の振り返りシートを作成して、クラス全体に共有できるような仕組みにしました。

神対応その5:プレゼン

 プレゼンをおこなう際、リアルタイムでフィードバックし、評価をGoogleクラスルーム上でやりました。プレゼンは「個別最適化」&可視化、リアルタイムでフィードバックが可能です。

神対応その6:各授業の小テスト

 Googleフォームで漢字の小テストをおこない、結果をみて復習の問題をつくりました。ワンクリックで統計がとれるので、生徒がよく間違える問題の傾向を把握するのも可能です。

各授業で実現した共有から共創・協働へのステップアップ

 少しずつICTツールを共有から共創・協働へつなげるためのツールとして実践していきました。授業での協創・協働活動も一部ご紹介します。

英語の授業 

 英語の授業では「Kahoot!」や「Quiziet」を利用していました。「Kahoot!」は、早押しのクイズ番組と同じような仕組みです。私たちの学校は、帰国子女が年に20人くらい転校してきます。そのうちの1人の生徒が「先生これ使わないんですか?使ったら面白いですよ」と提案をしてくれました。使ってみるとかなり面白く、すぐ答えて覚えていくスタイルで英語の授業は「Kahoot!」を利用しているようです。

国語の授業

 私が受け持つ国語の授業では、楽しみながら学べるという俳句にチャレンジしました。修学旅行の振り返りや思い出をiPad上で記入してもらい、写真をもとに俳句をつくる学習になります。私がコメントを返し、生徒が俳句を創造して発表し合う仕掛けです。実体験からそのまま学習につながる、国語の枠にとらわれない広い学びがあったと思います。

誰でもプレゼンができる方法をTIの先生から学ぶ

 プレゼンテーションのスタイルは、今までみんなの前で発表するスタイルがメジャーでしたが、どうしても話すのが苦手な生徒はいるので課題感がありました。

1対1のプレゼンを何度も繰り返して自信につなげることで、皆の前でも発表ができるのではないかと思い、生徒全員にGoogleスライドを作成してもらい隣の子にプレゼンをしようと提案しました。

 TIに参加していた先生が、iPadを使って言葉や写真を紙芝居のようにスライドさせながらプレゼンするのをみて、苦手な生徒でも隣の子にうまく伝えることができるなと思い参考にさせてもらいました。

データ収集や思考の視覚化

 Googleフォームを活用してアンケートの実施や情報収集をしていましたが、収集したデータをもとにレポートにまとめ、数字が現す傾向を分析するといった論理性を高める学習も進めています。

 こういった活動を目にしたほかの先生も、数学の授業で紙を使って計算するのではなく、思考がみえるようにジャムボード(Google Jamboard)で計算するようになりました。私も国語の授業でノート・ホワイトボードの代わりにジャムボード(Google Jamboard)を使っています。個別最適化の学習スタイルを構築するために自分のペースで学習できる工夫も始めています。

GIGAスクール構想推進のコツ

 GIGAスクール構想推進を0からおこなうのはとても大変です。SNS上やネット上には様々な情報があふれているので、既存情報のベースを活用してオリジナルの要素を入れる、「TPS(徹底的にパクってシェア)」の精神が大切です。この言葉を私はSNS上で知り、大切にしています。そして、まずは行動するというスピード感が成功への近道なのではないかと思います。

 ICTは生徒の方が圧倒的に知識があり、使用することに慣れています。生徒に任せて頼ると想像を越えた結果を出してくれます。例えば、教員が作成する学習計画表を、私が公開する前に生徒たちが突然つくってきたんです。「先生、こんなのつくったんですみんなに提供してください。」と。

 安全を考慮して規制を強化するよりも、どんどん発信してもらって共有、共創を任せると、生徒たちは私たちの想像をはるかに超えてきます。大人がチャレンジして楽しみながら生徒に任せるのが大切なのではないでしょうか。

 私も引き続きGIGAスクール構想が目指す「全ての人にグローバルで革新的な入口を」という取り組みを試行錯誤しながら取り組み続けたいと思います。

Jul 7, 2022 | category : アルムナイラボ


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