第8回 アルムナイラボ 2022年11月13日(日)より
常翔学園高等学校の教論、教育イノベーション センター長の池田弘と申します。今回は私が所属する学校の紹介と「主体的学びを科学する」の研究でみつけた新しい授業スタイルを紹介します。
学校の特徴
常翔学園中学校高等学校は、学校法人 常翔学園の設置校のひとつです。教育理念として「『自主・自律』の精神と幅広い『職業観』を養い、目的意識をもった進学の実現により将来実社会で活躍できる人材を育成する。」を掲げています。
入学後の学習コースでは、一貫コース、スーパーコース、特進コース、薬学・医療系進学コース、文理進学コース、文理進学コース(スポーツ)があります。2、3年生では、特進コースが「特進コースA」と「特進コースB」と、文系と理系に分かれます。
私は数年前からクラスをもっておらず、コース長や教務部長、入試部長、教育イノベーションセンター長を渡り歩いてきました。クラスを持っていたときは主に探究授業や専門教科の科学・化学を担当しており、理系の生徒に化学を教えていました。
一切を教えない演習授業の実態とは
本日は「『主体的学びを科学する』〜全く教えない授業の展開の一例〜」についてお話していきます。文系の生徒で理系の科目に苦手意識がある生徒や、そもそも勉強しない生徒に対しての授業改善です。
改善をはかるためにおこなったのは、iPadとパソコンを活用した化学基礎の文系選択演習授業です。一貫コースの1組(9人)を対象に授業をおこなったり、スーパーコースの文系(13人)の生徒と特進Aコースの文系(8人)が合同で授業をしています。
授業は3〜4人のグループに分け、生徒だけで問題や回答、解説をすべて考えてもらう授業ができないかと思い取り組みました。 実際には2学期からまったく教えず、生徒だけで完結する授業ができています。
作成時のミッションとして、選択式問題の作成を、各班長を中心に進めるように伝えました。ここでいう問題は「作品」と呼び、点数に関係なく、問題という「作品」をつくらせます。
問題の作成期間は約1ヵ月半です。私は「作品」のチェックをしますが、解くのは生徒自身です。
3学期はグループで作成した「作品」を解いて自己採点します。ほかのグループが自分たちの「作品」の採点をするので、間違えた部分の解説をします。例えば1班、2班、3班があれば、1班は「作品」と解説をつくり、2班と3班の「作品」を解きにいく。質問は「作品」を作成したグループに聞きにいくような、生徒たちで完結する仕組みを考えました。
【授業の形式】
①3〜4名のグループをつくり、各班ごとで問題や回答、解説を生徒たちで全て考えるようにする
②選択式の問題「作品」を作成する
③ほかのグループの「作品」を解いて、自己採点をする
④質問は問題を作成したグループの生徒に直接聞くようにすることで学びを深める
その後は評価シートをつくり、Googleフォームでアンケートを実施します。また、毎週感想を書いてもらい反応をみています。
ある生徒からは「チームのみんなが協力的でとてもよかったです。これからの授業が楽しみになりました」と書いてくれました。
私は授業中に生徒のそばにいます。基本的に教員という立場より、ファシリテーターとして対応するようにしています。
(グループに分かれて、実際に問題をつくる)
(ほかのグループのところにいって、わからないことを聞いている)
iPadで資料をつくっていますが、「作品」を解くときだけは紙に印刷しています。実際にわからなかったことや間違えたところは、作成したグループに生徒自ら話を聞きにくいようにしています。
探求し続ける生徒との関わりかた
私自身の教育方針が変わるほど、常翔学園高等学校に移動したことで自分の教育観が変化していきました。常翔学園高等学校では担任を6年間担当をさせていただいた後、教務部長や教育イノベーションセンター長など渡り歩いてきました。
私が特に変化した瞬間というのは、入試部長から現在の教育イノベーションセンター長になったタイミングです。今回ご紹介したような、生徒が主体的に学ぶ仕組みをつくるスタイルを実践できたのは大きな変化です。
今日お話しを聞いてくださっている皆さん、もし目の前の生徒が「授業がわからない」「面白くない」を理由に寝ている場合はどうしますか。
私は、学びのサイクルを生徒の学習スタイルのなかでつくり、自分たちで解決するという方法を導きましたが、ほかにもいろいろな方法があると思っています。これからもさまざまな意見を参考にしながら実践を重ね、生徒の積極的に学ぶ姿勢の引き出しかたを考えて最適解をみつけていきます。