私立小学校勤務 高尾弥生先生
公立小学校で勤務後、2018年から私立小学校で4年生の担任をしています。新型コロナウイルスによる休校決定、私だけではなく学校内も混乱を極めていました。幸い生徒たちがiPadを使えるという環境があり、TIのオンライン講座に参加し学びを深めようと思いました。
TIのオンライン研修では、授業での実践課題がでます。当初は講座で習ったGoogle Jamboard(グーグルジャムボード)*を活用したブレインストーミングを実践授業にしようと考えていました。しかし、いざ準備を進めてみると、Googleのアカウントが校内では使えず・・・当初案を断念。ICT活用では、思い通りに進まない現実にやきもきしがちです。しかし、なぜこの授業をしたいのかに立ち返った時、「思いを広め、深める場づくりはどうやったら提供できるか」という問いを立て、「自分が生徒だったらどうだろう、どんなことが嬉しいだろう?」「どんな代替手段があるんだろう?」と再考しました。そして、keynote(キーノート)**とオフライン環境を組み合わせた、「サイレントクラスミーティング」と称した独自の学級会を考案したのです。
(注)
*Google Jamboard(グーグルジャムボード):オンラインでホワイトボードのように共同編集ができるアプリケーション
**keynote(キーノート):apple社が提供するプレゼンテーション用のアプリケーションで文字や画像を挿入してスライドをつくることができる。
iPadで「無言の対話」を実現する
「サイレントクラスミーティング」で目指したことは子ども同士の本音での対話です。三密を回避し、1時間まったく発声しないまま「無言で対話」をするワークの手順は以下のとおりです。ポイントは誰の意見かわからないまま、すべて「匿名」で行われるということです。
【サイレントクラスミーティングの手順】
1. iPadに入っているプレゼンテーションアプリkeynoteで、クラスに対する思い(良いところ、良くしたいところ)を、全員無記名で作成して提出してもらう。無記名のまま、プリントアウトした用紙を廊下に掲示する。
2. 生徒たちは他の人の意見を見てまわり、思ったことを無言でグリーンの付箋に書いて貼る
3. 一度自分の席に戻り、ありのままの思いをワークシートに書き留める
4. みんなの意見が記載されているグリーンの付箋をみて、今度は改めて感じたことをピンクの付箋に書いて張る
5 . ワークシートに思いを書き留める
匿名であることが心理的な安全につながったのか、本音で意見交流ができたのではないかと思います。ある生徒は、「友達もいろんなことを思っているんだということに気づいた」と感想を残してくれました。授業を通じて、子どもの方が柔軟でチャレンジャーであると思いました。
ICTへの苦手意識の変化
TIの講座を受ける際、オンラインは便利で使いたいと思っているものの、うまく活用できていない自分に悔しさや悲しさを感じていました。しかし講座に参加するなかで、自分は単に「オンラインを使いこなすことを目的にしていた」ということに気が付きました。オンラインは手段にすぎない、単なるツールなんだ!と意識が変わった途端、オンラインツールのおいしいとこどりができるようになっていきました。そして、受講を通じて、「一人じゃない・仲間がいる」という実感がもてたことも大きかったです。チャレンジには「大人」も「子ども」もない。できることから実践するという経験を通じて、皆が楽しめる学校作りに挑戦する意欲をもらいました。