第2回 アルムナイラボ 2021年11月14日(日)より
ティーチャーズ・イニシアティブ(以下:TI)1期生のApple Distinguished Educator、倉田真先です。今回は「子ども達のセカイ観の広げ方」をテーマに掲げ、私の活動を詳しく説明していきます。
「1.3%」ってなんですか?
私が担当している中学1年生の授業で、「世界の困りごと」について生徒に調べてもらいました。そこである学生が「1.3%」の数字に関する問題提起をしてくれました。
「先生!世界の困りごと1.3%ってなんやと思いますか?」
実は「1.3%」という数字は、日本におけるコロナウイルス感染者の割合を表した数字です。2021年10月末時点のコロナウイルス感染者は172万人、日本の人口約1億2500万から計算すると1.3%になるわけです。
人口全体の1.3%しか感染していないのに緊急事態宣言をするのはおかしいのではないかと、中学1年の生徒がクラスメートに語りかけました。結果、日本で18,321人がコロウイルス感染症の影響で亡くなっている理由が緊急事態宣言につながるきっかけだと考えついていました。
自分で考えて問題提起をしてくれた印象的な意見でした。
私が掲げているテーマ「生きる」のきっかけ
生徒が投げかけてくれたように、これまで(2020年1月から2021年10月末)の日本のコロナウイルス感染による死者数は18,321人いました。ここで注目したいのは、2021年1月~10月の自殺者数が17,541人と、こちらの方が期間が短いのにも関わらず、コロナ感染による死者数とほぼ同数になることです。(警察庁の報道発表資料では、2021年中の自殺者数は21,007人まで登りました。)
歴代の数値をみてみると、毎年約2万人以上の方がこの世を去っています。コロナウイルスよりも、自殺者の増加が緊急事態だと思うのです。
8年前には、日本の大学生による自殺者数が1000人を超えたニュースが出ています。私たちの「教育」で救える命、自殺を減少させるきっかけがあるのではないかと、私は長年考えています。
「なんで命を絶ってしまう子がでてくるのだろう」
そのように関心を持ったことが、私の教育テーマが生まれるきっかけになりました。
子どもたちの世界観を広げることでつながる未来
実は、自殺にはルールが存在します。ほとんどの場合、遺書がないと自殺にカウントされず、転落死や圧迫死となる場合があり、死後2日以内に発見されないと自殺の扱いにならないのです。つまり、警察庁が報道発表資料として公開している自殺者数には、カウントされていない方が多数含まれている可能性が高いです。
引用元:令和2年中における自殺の状況 資料(946KB) 警察庁資料より
小学生や中学生の自殺者数をみてみると、10歳〜19歳からだんだんと増えています。20〜29歳になると、ものすごい数の子どもたちが亡くなっています。10〜29歳のほとんどが学校教育に触れていると思います。私たちが関わってる教育において、子どもたちの「生きる力」が身についていないのではないかと思うのです。
日本では「大学に行かせてなんぼ」という風潮があり、大学に行くのが目的になっていることに疑問を持たざるを得ません。生きる力が大学卒業と同時に身に付くとは限りません。中学校、高校生の間で子どもたちにどんな生きる力を与えることができるのか。学校を通して追求していかないといけないのではないかと思います。
現在、学校は非常に視野が狭い教育が中心で、外の情報を取り入れる仕組みが少ないのが現状です。学校外で友達を増やして情報を得たとしても、学校で発表、共有する場所は少ないという課題があります。
学校の世界観を広げ、生徒たちの世界観につながれば、生き方の可能性を広げることができるのではないでしょうか。悩みの小ささに気が付いて命を落とす子どもが減り、自分が歩むべき道のヒントになるなど、何かきっかけが生まれるのではないかと思っています。
子どもたちの未来を広げる団体「セカイの広げ方」
<YouTubeアカウント「FRIEND’s HIKE繋がりから広がる世界」>
参照:YouTubeアカウント「FRIEND’s HIKE繋がりから広がる世界」
子ども達の世界を広げるきっかけづくりとして、2020年11月頃に「セカイの広げ方」という団体を立ち上げました。現在、教え子2人と学校の教員3人と他職を含む計8人で活動しています。
活動事例のひとつとして、YouTubeアカウント「FRIEND’s HIKE繋がりから広がる世界」を紹介します。このチャンネルは、MCとゲストさんの対談をWeb上でおこない、出演者の職種、人生ストーリーなどを紹介する番組になります。ゲストの方とつながっていき、現在では150人ほどが出演しております。私の友達の友達には芸能人がいますし、大手IT企業の社長さんもいます。友達の友達を辿れば、本当にすごい世界が広がるなと活動していて思います。
これまでいろんなゲストの方を迎えています。高校3年生で余命1週間を告げられた方や、シンガーソングライターの方、ギネス世界記録を複数持っている方などを紹介しております。日本では約1万7000職種が存在するなかで、多くの生き方や仕事があるんだと子どもたちに伝えたいと思っています。
今後の活動として
子どもたちの環境が変わらない限り、夢があるのにも関わらず潰されてしまう問題が起きます。子どもたちが「こんなことやりたい」と思いを抱き、諦めないためにも、周りの環境、学校内、そして保護者の世界も広げないといけないと思っています。
探究授業を高校1年生、2年生を通して実施しても、高校3年生になった途端に「絶対大学に行かないといけない」と、思考が止まったかのようにベクトルが変わる様子に疑問を抱いています。
「大学だけがゴールではない」が当たり前になる世のなかで、その選択肢をどうしたら浸透させられるのか。私たちの団体「セカイの広げ方」は、学校内でもアプローチできる方法を探求し続けていきます。