挑戦!ホンモノにふれよう!政治を身近に感じよう

第5回 アルムナイラボ 2022年5月8日(日)より

 常翔学園中学校・高等学校の学年主任、池澤友宏と申します。私が所属する学校の紹介、「課題解決型学習」という実社会で活躍できる人材を育成する方針について、過去に実施した授業内容とあわせてお話します。

時代とともに変化した、私学に対する親御さんの期待

 大阪市旭区にある常翔学園中学校・高等学校は私立の学校です。

以前、関西圏の親御さんを対象に、私立の学校に求めているものは何か調査がおこなわれました(Gooリサーチ・読売ウイークリー調べ)。

 その結果によると、親御さんが私学に求めているのは部活や校風、人脈など、受験とは直接かかわらないことでした。

 本校に通う生徒の親御さんも同じ想いなのか、実際にアンケート調査をさせていただきました。「 将来、自分の子どもにどんな大人になってほしいか、どのような能力をみにつけてほしいか」という質問に対して、下記のような回答がみられました。

・チャレンジ精神

・コミュニケーション能力

・困難を乗り越える力、めげない精神

・思いやり、人の気持ちを考える力

・柔軟な考えと広い視野、最後までやり抜く力

・この時代を生き残れる力

 このアンケートの結果によると、誰も良い大学に入って欲しいとか、良い会社に入ってほしいとか、学業に対する希望はありませんでした。確かに難関の国公立である京・阪・神大学や難関私立大学に入学することを求めてはいるものの、根底には「子どもに”幸せ”になってほしい」という思いがあることがわかりました。

 ”幸せ”になるためには、社会人として生きていく力、すなわち人間力・21世紀型能力※が求められています。 

※21世紀型能力とは、今後グローバル化やICT(情報通信技術)化がいっそう進むことを見すえ、将来をになう子どもたちが生き抜いていくために必要な力を体系化したものです。 

 社会では何を求められているのか。一般社団法人日本経済団体連合会が新卒採用に対するアンケート調査をしたところ、企業が採用時に重要視する項目は下記になりました。

1位「コミュニケーション能力」※16年連続

2位「主体性」※10年連続

3位「チャレンジ精神」※3年連続

17位「学業成績」

18位「出身校」

引用:2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果

 社会でもある程度の学歴は求められているものの、人間力・社会人基礎力のほうが重要視されています。日本の教育は、仕事力や成果につなげるためのIQ(知能指数)を求めていましたが、それだけで成功するのは難しくなりました。人間力であるEQ(心の知能指数)を加えていく必要があります。

学歴社会はもう古い、21世紀の社会と保護者のニーズに合わせた教育

 今までは良い大学を卒業すれば良い会社に勤めることができ、幸せになれるという考えが学歴社会を支えてきました。しかし、この学歴社会はもう成立しなくなってきています。

 学校では「進学率」を重要視していますが、社会や保護者は「人間力の向上」「幸せ」「社会に貢献できる人材」を求めています。学校側としてはわかっているつもりでも、偏差値や進学実績を重視する報道の影響で、進学率を重要視してしまう傾向にあります。

 社会の求める能力が変わることで学校教育も変化し、学力の測り方も変わってくるのではないかと思います。

 社会に出たときに求められる能力は「答えのない課題に対してどのように取り組むか」です。学校では問題に答えが用意されていますが、社会に出ると答えは用意されていません。子どもたちが価値観や人生観、生き方を発見する能力をみにつけられる教育をしていかなければなりません。

 常翔学園中学校・高等学校は「自主・自立」の精神と、幅広い「職業観」を重要視したキャリア教育に力をいれています。とくに力をいれているのが「課題解決型学習」という実社会で活躍できる人材の育成です。

TIとの出会いで大きな挑戦へ

 私がアンケート調査や学校の課題に取り組んでいる際、一般社団法人ティーチャーズ・イニシアティブ(以下:TI)と出会いました。TIからは「本質的で新しいプロジェクトに挑戦せよ」というミッションが与えられ、そのなかには3つの選択肢と条件がありました。

【プロジェクトの選択肢】

1つ目「まったく新しい授業実績」

2つ目「生徒と先生が輝きだす学校革命」

3つ目「いまより豊かな未来をはじめる社会的活動」

【条件】

・関わる人の人生にとって有意義であること

・教師、市民としての願い、意図、仕掛けや工夫、期待効果が明確であること

・これまでやったことない全く新しい挑戦であること

・自分自身がワクワクすること

 TIのプロジェクトに取り組むなかで、新しい授業実績や人の人生にとって有意義とは何かを考えていたところ「※主権者教育」に目をつけました。もともと模擬選挙を実施する予定だったこともあり、主権者教育について本物の政治家に語っていただこうと思いました。

頑張っている大人の姿、頑張っている大人はカッコいい、世の中捨てたもんじゃない、などなど感じてほしいものがたくさんあったため、実際に社会の現場で活躍している本物にふれる事が重要だと思いました。

※国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成していくこと

私たちの声を、私たちの未来に 

 年々若者の投票率低下が問題になっています。2018年の国政選挙における年代別投票率では、全体の平均投票率53.68%に比べて10代は36.15%(18歳が47.87%、19歳が33.25%)、20代は44.87%と、半数以上の方が投票していません。

 少子高齢化時代が進んでいくなか、ますます若者よりも高齢者を重視した政策に変わるのではないかといわれています。 

「じゃあ、うちがやろうじゃないか」

 義務教育が終わった3年後、18歳から参加できる選挙に向けて、自分の意見を明確に持つことを目的に、ある一定の得票数をもつ政党にお声をかけさせていただきました。ご連絡させていただいたすべての政党が参加していただけることになりました。

■参加いいただいた政党

日本維新の会 音喜多駿

日本共産党 辰巳孝太郎

公明党 伊佐進一

立憲民主党 西尾勝成

自由民主党 松川るい

NHKから国民を守る党 浜田聡

国民民主党 白岩正三

社会民主党 川口洋一

れいわ新選組 山本太郎

 各党の演説・マニュフェストを聞いて気になった政党を選んでディスカッションをし、各党へ投票をおこないました。

生徒たちには社会の第一線で戦っている政治家を間近でみて、感じて、何かをつかんでほしいと思い実施しました。

 実践的な選挙をおこなうために、本物の投票箱をお借りして投票をしました。

もちろん、出口調査をおこない、投票前の各生徒にインタビューさせていただきました。

「今回、どの政党に投票するか、迷った政党を教えてください」

 投票に迷った政党は、日本維新の会25人(23.4%)、れいわ新選組24人(22.4%)が多くなりました。

では、投票結果はどうなったのか。

 日本維新の会が最多の35票を獲得しました。投票に困った政党として2番目のれいわ新撰組は11票となりました。社会では投票率を大きく占めている自由民主党が少なくなる結果となりました。

 政権与党である自由民主党は、各党から政権運営を責められていた影響もあり、投票数が落ちたと思います。今回の摸擬選挙ではマニフェストのお話をしていただいているので、子どもたちの共感を得られなかったことがわかりました。

■当時の摸擬選挙の様子

参議院議員 浜田聡:常翔学園中学校での摸擬投票に参加してきました ※生徒さんが投票中に動画を作っています ※結果は106票中、5票いただきました!ありがとうございました。

音喜多駿のブイログV-LOG!:直接対決!山本太郎 vs N国vs音喜多駿!!松川るい議員も大参戦して、松井一郎代表の元所属校で「摸擬投票」してきた!  

関連記事:15歳からの主権者教育

 私が思う学校は、勉強(強いて勉める)するところではなく「学ぶ」ところです。学校は「学び」の仕方や面白さを伝えていかなければいけないと、摸擬投票を通して強く感じました。

今がチャンスだとおもったらTryすること「CHANCE」と「CHANGE」

 反省する点はありますが、私が大事にしていることはCHANCEと思ったらTryすることです。CHAN”C”Eのときに”T”ryすることでCHAN”G”Eとなります。

 まず行動することで教育は変わると実感しました。摸擬選挙では生徒たちの反応もよく、満足度が高かったです。

政治的無関心の原因は学校にある?縛りの多さ

 私が摸擬選挙を通して感じたことは、そもそも学校教育が政治的無関心を生んでいるのではないかということです。

*指示は、支持の訂正です。 

 たとえば生徒会は、生徒からの投票で生徒会に選ばれたにも関わらず、権限は多くありません。そのため、生徒たちは物事を変えた経験がなく、そもそも物事を変えられるとも思っていません。

 投票する生徒も生徒会に期待しなくなり、そのような経験が若者の政治離れにつながり政治的無関心を生んでしまっているのだと思います。生徒会を教員が尊重して活発にさせることが、われわれ教員の役割だと感じました。

今回の話で、生徒が自ら考えて行動を起こせるような授業やしかけ、教育現場の体制について考えるきっかけになると嬉しいです。

Nov 6, 2022 | category : アルムナイラボ


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