第7回 アルムナイラボ 2022年9月18日(日)より
履正社高等学校の教諭、ティーチャーズ・イニシアティブ(以下:TI)2期生の高見頼久と申します。私は履正社高等学校の卒業生で、新卒から今の学校へ就職しました。
今年で教員歴が20年目となり、教務部部長補佐と探究推進リーダーとして活動しています。
私が所属している履正社高等学校は2022年で創立100周年を迎えました。大正時代から100年間「理性不畏」「勤労愛好」「報本反始」の三箇条から「建学の理念」を旗印に掲げて教育活動を一筋に続けてきました。
今回は100周年を超える学校が直面した変化の必要性と学校改革についてお話します。
入試がきっかけに気づいた変革の必要性
履正社高等学校は2022年に新しい指導内容が導入されました。プログラミング教育やAI、グローバル化に適応する内容など、おもしろい学校へ変えていこうと大きく動きはじめた年になりました。
(2022年度に導入された授業内容)
授業内容が変化したきっかけは、2021年2月に入試の生徒募集で応募が想定を下回ったためです。もちろん人口減少も起因していますが、私立の学校であるため教員同士の入れ替わりがほとんどなく、情報が入らず新しい取り組みに挑戦できないのも原因だと思います。
私が思う「理想の教員像」が古いのではないか
私は学校に変革が求められていると感じ、各教員に1対1のミーティングで必死に課題感を伝えてきました。自分自身の視野を広くするためにも学校外の方ともお話しして、1年半で約100人と会話してきました。
そのなかにTIとの出会いがあり、研修に参加させていただきました。その結果、私が持っていた教育観を新たにすることができました。
私が思う理想の教員像は、体育会系の強いリーダーでした。実際、声を張り上げながら「おれについてこい」「こうしたらうまくいく」と伝えていました。しかし、そのやり方は時代の流れに反するのでやり方を変える必要があると気付きました。
振り返れば、教育は明治時代から「日本人としての国民性を植えつけるために」指導されてきました。フランスやアメリカの自由主義を取り入れたとしても、閉ざされた教育や考えに帰着する流れが繰り返されていたと思います。しかし現代は、国の教育方針も開かれたものに変わり、自分で考え行動する力が求められるようになってきたのです。
長年培った教育方針を急に変えるのは勇気がいるだけでなく難しいです。急激な変化によって取り返しがつかない事態になったらどうするのか、不安を感じながら活動しているのも事実です。
教員だけではなく生徒も巻き込む教育の価値
不安を抱えたまま生徒と向き合うだけではなく、私は正直に不安な気持ちを生徒に共有しています。ゴールがない中で主体的に活動するには自ら考えることが大切で、大人もそういった探究をしているという姿勢がつたわればいいなと思います。実際に起こっている事象や心境変化を生徒に伝えることは価値があるのではないでしょうか。
今の私は大きい声も出しませんし、直接答えを伝えません。自分で考えてもらい、時間がかかっても生徒を見守り待つ指導方法に変えています。変わるために自分も学び続ける必要があるので、年齢も立場も関係なく自分の学びを教員や多くの方と考えを共有しています。
1年半たった今、ようやく大きな一歩
(パフォーマンスに備え作ったTシャツ)
変化の過程はとてもつらいですが、うれしいこともありました。2022年の文化祭、軽音楽部の発表会で教員がバンドを組んでライブをおこないました。さらに、ライブの様子をみた校長先生が別の日に歌を披露しました。生徒もですが、教員も目を輝かせており、一体感が生まれました。
教員がパフォーマンスするというのは、硬い文化をもつ学校で今までなかった取り組みでした。私たちの学校では大きな変化なのです。自分たちが想像もしていなかったスピード感で空気が変わっているのを実感しています。
少しずつですが、TIで学んだ心理的な安全性を教室や職員室で活かし、伝え続けたことで学校の変化につながってきたのだと思います。
生徒を中心においている学校は受験、探究など、何をとってもいい学校だといえます。そういう学校のあるべき姿を考え行動した結果、直接的な指導がなくても自分たちで考えて教員も生徒の目もキラキラしているイベントが実施できたという結果がうまれました。
今年は多くの若い教員が入社してくださいました。変化に対応する学校として自分自身できることは多くあります。まだまだ力不足な点もあり、悩みながらですが、生徒が輝ける教育現場にさらに近づけるように自分も橋渡しができればと思っています。