苦闘と喜びの4年間、そしてこれから。

第7回 アルムナイラボ 2022年9月18日(日)より

 ティーチャーズ・イニシアティブ(以下:TI)全国版4期の佐藤恵理子と申します。新卒で一般企業に就職し、3年2ヵ月勤めたあとに2年間塾講師をしながらニュージーランドに短期留学をしました。

 教員生活は2018年からです。春日部共栄中学高等学校の非常勤講師として採用され、2019年に専任教諭として中学校の副担任に近いポジションで講師を担当しました。3年目に中学校1年生の担任となり、4年目と5年目で学年キャップとして活動していました。

 今回は、私が教員生活のなかで体験した学級崩壊のお話や、重要視していることをお話します。

学級崩壊から学んだこと、生徒と向き合う姿勢

 私は教員として5年間、生徒たちから多くを学びました。そのなかでターニングポイントとなった3つの事柄を紹介します。

ターニングポイント①:学年付の学年大荒れ

 私が中学2年生の副担任を受け持ちした際、教員と生徒との信頼関係が薄く教科崩壊や学級崩壊が起きていました。ちょうど習熟度別にクラス編成がおこなわれたタイミングでもあったため、選抜クラスとそれ以外という印象が生まれ、劣等感や差別を生み出す構造にありました。

 多くの問題があるなか私自身も振り返ると自分の思いを語らずに「こうあるべきだ」と理想を生徒に押し付けてしまった1年間だったと思います。うまくいかずほぼ泣きながら向き合っていました。

ターニングポイント②:TIに参加

 うまくいかない苦しさを抱えながら、TIに参加をしました。その結果、自分が何に対して苦しみを感じているのかを言語化できたことで救われたと思います。TIではシステム思考の考え方や内省を通じて多くを学びます。TIで大切にしている考え方である「安心安全な場づくり」については、概論を学ぶだけでなく実践を通して学ぶ必要があるため、私が持つ経験や実績と絡めながら試行錯誤しました。

 安心安全な場づくりを実現するために、生徒と1対1で会話をする時間を設けました。普段は反抗的な生徒も、さまざまな背景を持っています。生徒たちには家族がいて各々の生活があります。いろんな思いや事情があって現状につながっている。当たり前のことかもしれませんが、一人ひとりが持つ背景を理解しようという姿勢をもって生徒との時間をつくるのが、少しずつ現状を変えるきっかけになると思っています。

ターニングポイント③:担任2年目、学年キャップに

 私は担任2年目に学年キャップとなりました。学年キャップは学年主任と違い、学年のまとめ役を担います。学年キャップによって学年の特徴が変化していく重要な役割です。

 中学1年生を担当した際、クラスで大きなトラブルがあり、学年担任が半分入れ替わり、新たにチームを再構築して子どもたちの安心安全を考え直す機会がありました。

 大きなトラブルが起きたクラスは、初めて担当した学年だったこともあり、なんとかしたい気持ちがありました。どうにか生徒が実りのある学校生活を送れるように、行動し続けた1年でした。

 「それやりすぎじゃないかな」「そこまでしなくてもいいんじゃないかな」とほかの教員に言われるほど空回りばかりしていました。それでも一緒に行動してくれる方や応援してくれた方も現れ、恵まれているなと感じました。

1、気づいたこと「子どもへの固定概念と『こうあるべき』はゴミだ」

 子どもたちのへの固定概念や「こうあるべき」は、子どもの成長の妨げにつながります。子どもへの期待と押しつけは全く別物で、おしつけはベテランの教員だろうと起きえます。

 大切なのは、自分の行動を小分けにして振り返ることです。私自身がうまくいかないと感じた際は振り返ります。

2、苦しいときこそ動く「動くと『気』が働く。そこから何かが開く」

 学年を持ってからの4年間は苦しくつらい時期が何度もありました。そういうときこそ、自ら話を聞いてもらう行動をしていました。

 行動することにより「気」が動き、何かにつながります。TIで出会った方たちには今でも相談に乗っていただいています。

 よくいわれることは「苦しいときこそ、動いた方がいいよね」でした。人に頼って生まれる暖かさやありがたさを実感しました。

3、想いを共有する「行動、目的の共有より『想い』が同じ方向へ」

 学年キャップとして勤務しているときに感じたのは、行動や目的の共有よりも「想い」を共有すると同じ方向を目指せるということでした。結論、行動や目的をお話するだけでは意味がありません。やはり「想い」を伝えて、私自身を理解してもらうのが大切です。

 学年ミーティングをおこなう前に、1人ひとりと対話を実践しています。学年ミーティングをおこなうときにはすでに全員の総意が取れており、確認するだけの状態になっています。

何よりも重要なのはどれだけ子どもたちを愛すか。

 教員5年目に突入している今、これまでの経験を踏まえて考えていることが3点あります。

① 若手はシステムのせいで苦労しなくて良い

 若手教員は、学校システムを理由に苦労をしなくていいと思います。私を含む、経験を積んだ層が解決できる問題であれば改善し、若手には次のステップに上がっていってほしいです。

② 各教員の強みを把握、できることをする

 チームとして、各チームメンバーの強みを知ることは重要なことです。たとえば、私の学年で、生徒に好かれる教員がいます。その教員は生徒の話を聞き、寄り添うことで本当に悩んでいることを聞き出すことができます。そのため、ミーティングの場でより具体的な改善策を練ることができました。適材適所が大切だと思っています。

③ 学校としての戦略、学年としての戦略 

 学校の戦略と学年の戦略を知ることは重要です。「今後、どうしていくのか?」をお話する際に、根本的な課題や目的を理解する必要があります。

なくてはならないもの、それは「愛」

 私が大切にしていることは「愛」です。大人同士で理念や方針などいろんなことを話します。しかし最終的に生徒や学年、学校への「愛」があるかないかで大きく変わってくると思います。

Jan 22, 2023 | category : アルムナイラボ


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