ICTが大の苦手だった私が、オンライン交流で生徒の進路や探究に活路を見出すまで

岐阜県立郡上北高等学校 熊崎孝之先生

 私が勤める岐阜県立郡上北高等学校は、卒業生の進学率が55%、就職率が45%と就職を選択する学生が多い学校です。今回は、私が受け持つクラス「地域産業探究」履修者10名に向けてTIでの学びを生かしてICT実践した様子を発表します。

生徒が主体的になれる、対話中心の授業をデザインしてみたい

講座は、全国から参加する先生と対話する時間も多く、「学びとは何か」を一段深堀りしていくような内容でした。対話の効果は、初めて会う他者にも関心が向き、話が聴けるようになることです。また、お互いの意見が一致する、共感できる部分を発見することで安心・安全に意見が言える場が形成されます。そのような場では学び手が自信を持ち、主体的に考えられるようになります。

 安心・安全の場をつくることは教員の役割だと実感し、私も「対話」を重視した授業設計をしたいと考えるようになりました。

△対話により発生する共感が安心・安全な場づくりになる

 加えて重視したのは、オンラインを活用した能動的な学びを生徒たちに経験してもらうことでした。生徒が自らオンラインで「発信側に立つ」「自分の考えを伝える」ことで、能動的に多くの学びを得て欲しいと思ったのです。

オンライン授業を高大連携の場で企画してみる

 ちょうどよいタイミングで、高大連携を模索している大学があることを知り、コンタクトしました。岐阜女子大学の教授に対し、私たちの学校がある郡上市の観光冊子の企画をつくり、Zoomで発表することになったのです。

私は当初オンラインでの授業デザインを重く考えていました。しかし、TIに参加している他の先生を見て、「いきなり全てをオンラインで行わなくてもよい」と考えました。対面となる教室では、ブレインストーミングでアイディアを出し、「癒し」「お城都城下町」といった観光テーマに分かれてチームをつくり、パワーポイントで紹介資料を作成するといった手順を踏んでいきました。

明らかな成長をみせた生徒にさらなる挑戦の場を、地域や機関をまきこんだ授業も実践

 いざZoomでの発表練習をはじめると、生徒は画面共有機能を使いこなし、普段発言しない生徒も教授の発問に応じるなど、積極的に授業に参加しているように見えました。

 授業後に生徒から意見を集めてみると、「発表する立場になって、オンラインではリアクションを大きくする意味が分かった」、「言葉だけで相手に伝えられるようにするためには、何を話すか準備をする必要があると思った」、「ペアワークをした子ともっとコミュニケーションをとりたいと思った」聞き手である他者を意識した感想を提出してくれる結果となりました。普段は自分の活動に着目した感想を寄せる子たちなので、その意識の変化には驚かされました。生徒にさらなる挑戦の場をつくろうと奮起したのが下記のスライドです。生徒が自らオンラインイベントの準備をしたり、コミュニケーションが苦手な生徒もネットの使い方を他の生徒に教えるなど交流がうまれ、自らの行動に自信を持つきっかけになっているのが見て取れました。TIで学んだ安心安全の場づくりが、実践を通じて少しずつ実現し始めていることを実感しています。

△Zoomを利用して実践した生徒と他コミュニティーとの活動
△発表をする熊崎先生

不安を解消したく参加したTIオンライン講座、「できる」が増えて挑戦が積み重なる毎日に

 あと20年以上続く・・・と想定している教員生活が今後どうなっていくのか不安があり、TIの講座に参加しました。最初はZoomの画面共有すらできなかった自分です。しかし、共に参加している先生たちも同じように苦戦をしながら、努力している姿を見て、「もっと学びたい、できるようになりたい」という気持ちが芽生えてきました。全国から参加する先生方との出会いは、オンライン学習の利便性を改めて認識させてくれました。遠くの人とつながりたいと思い、自分でもオンラインイベントを企画するところまで来ています。初めてホストとなったイベントでは、参加者をzoomの部屋から締め出してしまうという大失敗も経験しました。しかし、回をかさねるごとに生徒も自分も成長していることを実感し、モチベーションが高まっています。同僚からも、「先生が恐れず進むと生徒も進んでいく。他の学校とコラボレーションするなど素晴らしい。」とのコメントがありました。できないことより、できることに注目する。少しずつ行動をして、仲間を増やし、結果を出す。今回のそんな経験を通じて、今後の教員人生を豊かにするきっかけをもらったと思います。

Apr 22, 2021 | category : 実践報告


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