第1回 アルムナイラボ 9月12日(日)より
TI1期生の「さとまゆ」こと、佐藤真由といいます。東京生まれ、東京育ちの私ですが、新卒入社した会社では日系企業の海外採用案件やバイリンガルの人材紹介営業をしていました。多国籍チームで唯一の日本人プレーヤーとして勤務をしていたので、異文化の折衝や日本人として自文化の強みについて考える機会が多くありました。
そんな背景もあり、現在は島根県にある一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームにて、地域留学に従事しています。今回は活動のひとつである、「地域みらい留学」について皆さんに共有をさせていただきます。
教育を通じて社会にイノベーションを、「地域みらい留学」とは
「地域みらい留学」は地方の公立高校が学区制をなくし、全国から入学生徒を募集する活動です。都会の生徒があえて地方の高校に行きたいと思えるような、そんな魅力がある学校や地域を地域みらい留学参画校(全国)・自治体の方と一緒に創り上げていく活動をしています。
島根県の離島から始まった、日本の未来を変える活動
「地域みらい留学」は、島根半島から約50kmに位置する隠岐諸島の一角、海士町(あまちょう)の島根県立隠岐島前高等学校で始まりました。海隠岐島前高校は当時廃校寸前だったのですが、地域の方々が協力をして、全国・海外から志願者があふれる魅力のある高校になりました。
地元の子どもたちも島根県立隠岐島前高等学校に進学するようになり、地域の面白い大人も巻き込んだ結果、U・Iターンも増えて地域の基幹産業である観光業が復活、日本財団の第1回ソーシャルイノベーション大賞を受賞するに至りました。
地域から始まる衰退を防ぐために、高校を軸とした施策を
「地域みらい留学」は教育と人口の課題に目を向けています。18歳未満の子どもに対しておこなわれた意識調査によると、日本の未来に対して「不安が大きい」と回答した子が37%と、国際比較をしても1番高い数値となりました。
社会感度を計る質問に対しては、「私は社会を変えられない」と回答する層が多く、将来への期待感が低くなっています。
このままだと40年後、人口減少により日本衰退のシナリオが現実的になっていきます。
私たちは「自分たちの地域や社会の未来は変えられる」と信じて、自ら挑戦できる若者の育成、意志ある若者が溢れる地域の拡大を目指しています。
意志ある未来のためには高校を核とした地域創生が必要です。そのため、地域からの人材流出における出口となる「高校の魅力化」を重要視しています。魅力ある高校があると、地元の人が戻ってきて教育移住のきっかけとなり、関係人口の構築につながります。高校の有無は人口の増減に10%以上のインパクトがあるといわれています。地域留学は「高校魅力化」がポイントになっているのです。
地域留学体験者の前向きな変化と活動の広がり
「地域みらい留学」を3年間経験した生徒は、他学生のアンケート結果に比べて「自分が社会を変えられるかもしれない」、「わからないことでも意欲的に取り組む」という前向きな回答をする傾向にあり、主体性や多様性、共同性に関わる態度が高い数字となりました。
ここで、昨年度から始まった「地域みらい留学365」を実際に体験した学生さんの感想を紹介します。
女子生徒「寮生活で自立でき始めたと思います。洗濯や掃除を自分でやるのですが、洗濯は思った以上にすぐたまるなど、自分でやって初めて得る気づきがあります。自己管理がだんだんできてきて、時間の使い方が人に振り回されずにできているように思います」
男子生徒「ほかの人に対して興味をもって接するようになったと思います。色んな人と関わると、自分との違いに対して興味を持ちます。違いを排除するのではなく、肯定的に違いを受け入れるようになりました」
ほかにも、生徒1人ひとりが主役になることで、学校にいけないくらい控えめだった子が活動的になっているケースもありました。実際の参加者さんをみていて、環境を変えると人は変わるんだなと実感しました。
「地域みらい留学」の広がりと可能性
島根県にある離島の海士町から始まった「地域みらい留学」を取り入れる学校は全部で80校まで広がり、地方の高校に留学してる生徒も2020年には500名を超えました。昨年度から内閣府と一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームの共同事業「地域みらい留学365」ができました。高校2年生の1年間だけ留学する制度が始まり、地域を超えて広がっています。
これからは今まで以上に自分の意思で挑戦を続け、自ら未来をつくる力が求められています。「地域みらい留学」は地域という多くの課題を抱えた課題先進地で、立場や世代を越えた多様な人々と実社会の縮図体験となる3年間を過ごします。
自分のやりたいことを実現させ、コミュニティの構成員としてどれだけインパクトを残せるか。それに挑戦できるのは「地域みらい留学」における魅力のひとつだと思います。
全国の高校が外から人を呼ぶためにいろんな魅力づくりや挑戦をしています。自然や文化にふれ、世代を越えた出会いなど、地域だからこそできる経験や出会いによってお互い切磋琢磨し合いながらチャレンジができる環境があります。留学後は自分の高校をアップデートしていける、相乗効果が期待でき、未来にもつながる活動をこれからもおこなっていきます。